東急5000系(2代目) 組み換えの歴史 解説編

2002年5月に田園都市線でデビューした5000系。その後、目黒線5080系、東横線5050系と派生形式も誕生し、8000系列に並ぶ大所帯となりました。一方で、デビュー3年後の2005年から数多くの車両組み換えが行われている形式でもあります。その歴史をまとめました。

5000系6扉車の導入

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田園都市線は以前より朝の通勤ラッシュ時の混雑が激しく慢性的な遅延が発生していた。その為、JR東日本で導入されていた6扉車を2005年2月から導入することとなった。

最初に導入されたのは5104Fである。5104Fは東武線内での踏切事故で、一部車両の機器が破損してしまった為、保留車となっていた。その5104Fに新製されたサハ5504・サハ5804を組み込み、田園都市線初となる6扉車組込編成となった。この組込時に中間車の組み替えも併せて実施された。

その後、5107F・5108Fは6扉車を含めた9両(1号車から3号車・5号車から10号車)が新製され、残りの1両(4号車)は5104Fから捻出された付随車を組み込み、10両編成となった。

また、既存の5102F・5103F・5105F・5106Fにも6扉車が組み込まれ、新製された5109F – 5116Fは1両が捻出された付随車で編成された。

5106Fまでは種別表示と行き先表示が別だったのに対し、5107F以降は、種別・行き先表示が一つにまとまっている為、外観からも組み換えが一目瞭然だった。

この時点で、5101Fへの6扉車組込は行われておらず、その後新製された5117Fは、10両全てが新製となった。5118F・5119Fはこの時点では欠番であり、5120F – 5122Fが6扉車2両を含む10両で新製された。

5000系6扉車の増強と東横線への転属

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6扉車を導入した田園都市線だが、混雑状況は改善されず、2009年4月から6扉車を2両から3両に増強することとなった。この時点で、5118F・5119F(それぞれ1号車から3号車・5号車から10号車の9両)及び、5101Fに導入予定の6扉車2両が製造されていたが、試運転等はが行われていなかった。また、5121F・5122Fについても保留状態となっていた。この状態から、5117Fの6扉車増強が開始された。

5117Fへは、サハ5522となる予定だった車両が4号車に組み込まれ、6扉車が3両となった。一方、サハ5522を抜かれた5122Fは、5117Fから抜かれたサハ5417を組み込み、サハ5822・デハ5922となる予定だった車両を抜かれ、改番され東横線で営業運転されることになった。

次に6扉車が増強されたのは、5107Fと5108F。この2編成には、5118Fに組み込まれる予定だった、6扉車がそれぞれ組み込まれた。また、5107F・5108Fから捻出された付随車が5118Fに組み込まれ、デハ5918予定の車両が抜かれ、8両編成となり東横線での営業運転を開始した。

5109F・5110F・5119Fは、先述の5107F・5108F・5118Fの組み換えと同様の内容が行われている。また、5105F・5106Fには、5101Fに導入予定の6扉車がそれぞれ組み込まれた。5120Fについては、サハ5822になる予定だった6扉車が4号車に組み込まれた。

5000系一部編成の4扉車への統一

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これまでに、5105Fから5110F・5117F・5120Fの8編成が6扉車3両化が完了した。しかし、6扉車の保留車はゼロとなっていた。そのため、5105F・5106Fから捻出された4扉付随車を、5102Fへ組み込み、代わりに5102Fから捻出された6扉車を5111F・5112Fの4号車へ組み込んだ。

同様に5103Fから捻出された6扉車は5113F・5114Fの4号車へ、5104Fから捻出された6扉車は5115F・5116Fの4号車へ組み込まれ、5102F – 5104Fが全車4扉化、5105F – 5117F・5120Fが6扉車3両化された。

なお、5121Fは6扉車2両を組み込んだ新製時の編成で、田園都市線での営業運転を開始し、その後も6扉車2両で営業を続けた後、6扉車を除く8両が東横線へ転属された。それに伴い余剰となった6扉車2両と新規製造された1両が5104Fに組み込まれ、5104Fは再び6扉車編成となった。また、5101Fは全車4扉編成のままで組み替えは実施されなかった。そのため、5101Fだけ電動車・付随車の配置が他の5000系と異なる。

5050系への編入

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上記の組み換えにより、付随車・ユニットを組まない単独電動車が3両ずつ計6両余剰となった。単独電動車については、電装解除され、5169F・5173F・5174Fの4号車に組み込まれた。5000系列の番号付与ルールに合わせ、5469・5473・5474といわゆる5050系の番号となっている。余剰となった付随車のうち2両は、5170Fへ組み込まれた。

6扉車が2両のままの5121Fであったが、上述の通り、6扉車の3両化は行われず、6扉車を抜き、余剰となっていた付随車を組み込み、8両編成となり東横線へ転属された。田園都市線で営業運転された5000系の編成単位での転属は初めてである。

そして、5104Fから捻出された付随車3両は、5171Fに2両と5172Fに1両が組み込まれ、5121Fから捻出された単独電動車は、電装解除され5172Fへ組み込まれた。

これにより、余剰車はなくなり、組み換えが落ち着いたかと思われたが、2011年2月15日に実施された甲種輸送では、サハ5569・サハ5573が輸送された。これを皮切りに、電装解除された車両は新車と差し替えられ、再び電装化された。(次章に記載。)

4000番台の導入

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東京メトロ副都心線への直通運転開始に合わせ、東横線内の優等列車が10両編成として運行されることが計画された。それに伴い、東横線の車両にも10両編成が導入された。2011年4月に導入された5050系は、4101Fとなり、東急で初の4000番台が割り当てられることになった。その後、2011年度までに6編成が導入された。

4101F – 4104Fについては、6号車を除いた9両が新造され、6号車で使用される車両は、電装解除されていたサハ5469・サハ5472・サハ5473・サハ5474が再度電装化され、編入された。5169F・5172F – 5174Fについては、5号車のサハが4号車に移動し、5号車のサハは新造された。

4000番台は10両編成で導入された為、2012年頃の東横線では運行できなかった。その為、4101F、4102Fおよび、4103Fについては、あらかじめ8両編成に短縮し運行されることになり、試運転後は中間2両が抜かれ、8両編成となり東横線で営業運転が開始された。なお、今までの5000系列とは異なり、2両抜かれた際に改番が行われなかった為、百の位と号車番号が一致しなくなった。

4103F – 4106Fについては、10両編成のまま東京メトロ副都心線・有楽町線で試運転が開始された。当時は線路が直接つながっていなかったことから、目黒線・東京メトロ南北線を経由し、東京メトロ新木場検車区、和光検車区へ移送されている。また、4103Fは東京メトロ線内での試運転が行われた後、8両編成で運行が開始された。

4000番台は2013年度までに10編成が導入された。

元住吉駅での衝突事故による4000番台の8両編成化と廃車・譲渡

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2014年2月14日は首都圏で大雪に見舞われた。その中、日付が変わり2月15日、元住吉駅に停車していた各駅停車に後続の各駅停車が衝突する事故が発生した。これにより、5155FとY500系 Y516Fが使用不可となった。8両編成が2編成使用できなくなったため、10両編成の中間車(6号車と7号車)を抜き、8両編成として運行されるようになった。

まず最初に4103Fが8両編成化された。その後、4103Fは10両編成に戻され、4102Fと4106Fが8両編成化された。4102Fは検査のタイミングで10両編成に戻され、代わりに4105Fが8両編成化された。2017年に代替となる5177Fが新造され、4106Fが10両編成に戻された。その後、4105Fは8両編成で運行されたが、2019年7月に10両編成に戻され、10編成全てが10両編成となった。その後、2019年8月に5178Fが新造され、2020年2月より運行を開始している。なお、4000番台の8両編成化に際しては、車両番号は変更されずに編成された。

この事故により使用不可となった5155FとY516Fについては、2017年5月31日付でそれぞれ廃車となっているが、Y516Fは書類上東京急行電鉄に譲渡され、東京急行電鉄の車両として廃車されている。また、Y516Fの代わりに5156Fが横浜高速鉄道へ譲渡され、Y517Fとして走ることとなった。

5000系6扉車の廃止

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ホームの安全性向上のため、首都圏の鉄道会社が各社ホームドア設置に取り組み始めた。東急電鉄もホームドア設置に動き出したが、6扉車があるとホームドア設置に支障があるため、6扉車の廃止を決定した。

4扉車への置き換えは2015年末に5120Fから開始された。置き換えは1年半弱で行われ、2017年5月の5105Fを最後に全15編成の置き換えが完了した。また、この置き換えにより5000系列で初めての廃車が発生している。

東横線10両編成の増備

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2019年に5178Fと一緒に5050系の中間車が輸送された。その車体には、「4611」・「4711」と番号が表記されていた。東横線の5050系は、10両編成に4000番台が割り振られていることから、10両編成になる車両であると判断することができた。搬入後はしばらく留置されていたが、2020年6月に5173Fに組み込まれ、車両番号も変更され4111Fが誕生した。編成すべての番号が変更されるのは、この事例が初となった。

2021年は10両編成の増備が行われなかったが、2022年になり、相鉄線直通運転に向けた工事のため横浜の総合車両製作所に入場していた5166Fが、4112Fとして甲種輸送された。その際に、無塗装の2両が一緒に輸送された。同じタイミングで輸送されたため、4112Fに組み込まれることが予測された。輸送後しばらくして、東横線にQシートが導入されることが発表され、無塗装の2両にQシートの塗装が施された後、4112Fに組み込まれた。Qシートはさらに6両が増備され、相鉄線直通対応工事が行われた5167F・5168F・5169Fに組み込まれることになると思われる。

5080系の8両編成化

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2022年1月に目黒線の8両編成化が発表された。これは、目黒線開業前から予定されていたもので、開業から21年の月日が経ちようやく実現することになった。既存編成については中間車が増備されることとなり、導入から変化が無かった5080系にも組み換えが行われることになった。

車両自体は2021年10月から輸送が開始された。この際に、Qシート導入に伴い休車となっていた、旧デハ6301と旧デハ6302が5080系塗装となり出場した。この2両はその後デハ5489とデハ5490に変更され、5080系に組み込まれた。5080系の増車は2022年10月に完了した。